原料染め
原料染めは、繊維を作る前の原料の段階で直に顔料を加えることで、より多くの水とエネルギーを要する従来の染色方法の代替となる技術です。
なぜ
素材の染色工程として一般的なバッチ染色は、膨大な量の水とエネルギーを必要とするもので、その結果無駄と炭素排出が発生します。パタゴニアが製品の一部を原料染めに切り替えたのは、それがバッチ染色に比べて水の使用量と炭素排出の削減につながり、全工程における化学物質の放出も大幅に抑える方法だからです。
原料染めは従来の染色方法とは異なり、繊維を作る前の原料の段階で直に顔料を加えます。糸は紡がれてから染められるのではなく、特定の色に染まった繊維から紡がれるので、その色は糸自体に取り込まれたものとなります。プラスチックが冷えて固まったあとに、顔料の微粒子が繊維の中に密封される様子を想像してください。つまり原料染めにより、色は糸の本質的な一部となるのです。
現在の取り組み
私たちのサプライヤーには、原料染めの糸に対する非常に高い最低発注量があります。それは事前に色の決定を固めなければならないからです。原料染めがあまり普及していない理由の大部分はここにあり、長いリードタイムを要するとともに、受注後の柔軟な対応はしばしば不可能であるためです。注文内容の変更や、ある色を数シーズンに継続しない選択は、余剰生産された糸が最終的に廃棄されるしかないことから、環境への大きな負債となります。
原料染めの糸をパタゴニアのウェアに採用する方法として私たちは、つねに何シーズンにも使われつづけることがわかっている定番の主色(blackやforge greyなど)を要する製品を見極めます。これが現在、業界が原料染めと前進していく方法とされているのは、この種の技術により色のバリエーションを実現できないからではなく、シーズンごとの色に染めた生地に採用するには負債が大きいからです。
パタゴニアの素材チームはこの工程に最適であるそのような製品を認識し、私たちが環境への影響を最小限に抑えながら責任をもって原料染めを採用できるよう取り組んでいます。
次なる展開
原料染めの採用における私たちの主要な目標のひとつは、テキスタイル染色工程における水の使用量を削減することです。他にも水を使用しない染色技術は開発されており、企業(パタゴニアを含む)はこの工程の長所と短所について理解を深めています。最近私たちは、特定の色の原料染めがマイクロファイバーの抜け落ちの削減につながるかもしれないということも学びました。この点についてさらにデータを収集するために、サプライヤーや研究者たちと取り組んでいます。
原料染めの少ない短所のひとつには、ナイロンやポリエステルのような一部の化繊にしか適用できないということがあります。しかしコットンのような天然繊維をより持続可能な方法で染めるための、変革をもたらす前進は遂げられています。研究と実験はまだ初期段階ながら、従来の染色方法にともなう温度圧力、水、エネルギー、時間、コストなしに色を実現することができるという有望なデータが出ています。
私たちは効率的な染色技術や技巧を探しつづけ、適用可能な新たな選択肢を採用するために励んでいます。究極的には、原料染めは私たちが地球への影響を削減する技術のポートフォリオの一部となるでしょう。