CHRO（最高人事責任者）とは知っておくべきすべてのこと
Amber Biela-Weyenberg | コンテンツ・ストラテジスト | 2024年2月16日
CHRO（最高人事責任者）は、組織の成功において常に不可欠な役割を果たしており、そのためにタレント・マネジメント、学習と開発、その他の人事戦略を策定し実行するとともに、企業文化を醸成して、組織が無数の規制を確実に順守するよう努めています。端的に言えば、CHROには成功のための幅広いスキルが求められます。
かつては管理職的な機能とみなされていたこの職責は、近年進化を遂げています。CEOを含む経営幹部が、今ではCHROを信頼できるアドバイザーとみなすようになり、彼らと協力してビジネス戦略の策定や重要な意思決定を行っています。
最高人事責任者とは
最高人事責任者（CHRO）は組織の人員の管理監督を行う幹部職であり、その職責には人員に影響を与える労働慣行やポリシーの策定および実施が含まれます。企業によっては、CHROを最高人事担当者または最高人員責任者と呼称したり、あるいはこの役割を担う人を人事担当バイスプレジデントといった別の肩書きで雇用したりすることがあります。
CHROは人事部門のリーダーとして、採用と人員配置、報酬、地方および国の法律の順守、労使関係、従業員のトレーニングと育成、福利厚生、給与など、ビジネスとその従業員に影響を与える複数の機能分野を監督します。
主なポイント
- CHROは経営幹部の一員として人事部門を率い、最高人事責任者と呼ばれることもあれば、別の肩書きを与えられることもあります。
- CHROは通常、人事または関連するビジネス分野の学士号または修士号を取得しています。
- CHROがその職責を果たす上で役に立つ能力としては、リーダーシップ・スキル、感情的知性、データ・リテラシー、ビジネス洞察力、明確なコミュニケーションの能力などが挙げられます。
- CHROは主に管理職としての役割から、CEOを含む他の経営陣と協力して取り組む戦略的ビジネス・パートナーの役割へと進化を遂げてきました。
CHROの責務
多くの組織が人材を最も貴重な財産であると公言しています。その理由は、熟練したスキルを持ち、大胆な目標を掲げ、誠実に取り組む労働力を擁する組織ほど、ビジネス・ゴールを達成する可能性がはるかに高まるからです。CHROは自らの広範な経験を活かして、組織に最高の人材を取り入れて育成し維持できるよう支援します。彼らの責務には以下のようなものがあります。
タレント・マネジメント
タレント・マネジメントは、組織が従業員を管理するための包括的な戦略であり、いくつかの主要な分野を対象としています。
- 獲得役職ごとに最適な候補者をソーシングして採用します。
- オンボーディング新規採用者が組織に順応できるよう支援するプロセスです。オンボーディングでは、新規採用者に会社の方針、手続き、文化について知ってもらい、知っておくべき人々を紹介し、職務の遂行に必要なツールやテクノロジーを提供します。
- リテンション業績の優秀な従業員を退職させないように維持するための組織戦略です。
- 報酬と福利厚生給与、賞与、休暇、退職プラン、保険など、人材の採用と定着につながるさまざまな福利厚生が含まれます。人材確保の優位性を保つために、CHROは企業が提供する福利厚生について見直しを求めることがあります。また、CHROは給与の平等性の確保についても責任を負います。
- 業績管理従業員が現在の職務で最高のパフォーマンスを発揮できるよう育成します。
- トレーニングと能力開発従業員が常に最新のスキルを習得してキャリアアップを図れるよう支援します。
- 後継者計画重要や役職の後任が必要になったときにその候補となれる従業員を探し出して育成します。
従業員エクスペリエンス
従業員が求人に応募した瞬間から離職または退職するまでの、組織と交わすあらゆるやりとりが含まれます。ポジティブな従業員エクスペリエンスを生み出す要因としては、職務の遂行に必要なツールを利用できること、尊敬や評価を受けていると感じること、公正な報酬や公平な処遇を受けることなどが挙げられます。
職場文化
組織の職場環境における行動、規範、共有される価値を集約したものです。ポジティブで好印象を与える職場文化の実現はあらゆるリーダーに求められる責務ですが、CHROは従業員エクスペリエンスを含めて、そうしたことに影響を与える数多くの領域を監督します。
規制コンプライアンス
雇用と職場に関する、国や地方、業界固有の法律や規制を順守することです。たとえば、ほとんどのCHROには、組織が差別防止、最低賃金、従業員データのプライバシー、職場の安全性、家族と医療休暇、その他の要件について確実に順守するよう努めることが求められます。
変更管理
従業員が絶えず変化するビジネス・ニーズに対応できるよう支援するプロセスを準備し、変化を効果的に管理するためのツールを彼らに提供します。たとえば、合併や買収においては、スムーズな移行を確保して従業員への悪影響を最小限に抑えるために、数多くの計画が必要になります。
人材管理（HCM）サービス
人事のさまざまな機能領域を管理するアプリケーションについて、選定、導入、管理、および従業員トレーニングを行うための戦略的な意思決定を、ITやその他の事業部門と連携して行います。適切なテクノロジーを選択することで、ビジネスの俊敏性と価値を高めることができます。
CHROになる方法
CHRO（最高人事責任者）となる人は、通常は人事部門で長年経験を積み、役員に昇格する前にさまざまな事業部門で要職を務めています。2021年のTalent Strategy Groupの報告によると、Fortune 200企業のCHROとCPOのうち84%が、少なくとも10～15年にわたって人事の専門職を経験しています。その過程は個々に異なりますが、これらはCHROを目指す上で役に立つステップとなります。
1. 幅広い経験に根ざした力量を発揮する
通常、CHROは人事、経営管理、または関連分野で学士号を有し、彼らの多くは人事でMBAまたはMSの学位を取得しています。しかし、CHROが人事以外の組織から抜擢され、ビジネスの経営面での経験を活かして財務、人材分析、または労使関係の面で関連する専門性を発揮することも珍しくはありません。人事組織からキャリアをスタートした人であっても、プロジェクト管理、採用、トレーニング、福利厚生管理などのさまざまなコンピテンシー、また対人コミュニケーションやチーム・ビルディングといったソフト寄りのスキルを身につけることが重要になります。CHROは就任前に人事の責任者またはバイスプレジデントの肩書きを経験しているのがごく一般的です。
2. リーダーシップとソーシャル・スキルを磨く
リーダーとしての能力は将来CHROとなる上で不可欠です。チームや会社に自信を与え、確信をもって積極的に行動し、困難な状況や危機的な局面においても彼らを導いていくことが求められます。また、アクティブ・リスニング、明確なコミュニケーション、さまざまな経歴を持つ人々との円滑な連携といった、高度なソーシャル・スキルも重要です。組織の複雑さや、ソーシャルメディアに認知される可能性に対処する必要があり、慎重さが求められる状況で人間味をもって対処できる能力が求められます。
3. ビジネスの深い知見を身につける
特に優れたCHROは、自らのビジネスについて理解し、ビジネスの文脈で、また役員との間で話を交わすことができます。このことは、人事組織における採用、トレーニング、多様性、企業文化育成、安全性その他の取り組みが、業界や政府の規制に沿うだけでなく、ビジネスの優先事項にも確実に沿うようにする上で重要です。また、戦略アドバイザーとしてCEOと効果的に連携することも不可欠です。
4. 常に学ぶ
医師や弁護士、会計士などと同様に、CHROもまた最新の研究、規制、業界の動向、イノベーション、認定について常に新しい情報を把握する必要があります。たとえば、重要な役職に対する現在の報酬水準、雇用関連法令の変化、HCMテクノロジーの進歩、著名な人事関連訴訟の判例、人材の採用と管理に関する最新の考え方などについて、常に最新の情報をおさえておくことが必要です。
5. 人脈づくり
人事の上級幹部の職に就けるかどうか、またはその職に空きができたことを知るかどうかは、自分が誰と知り合いなのかで決まることが往々にしてあります。人事関連のイベントや専門職協会に参加したり、現場の同僚と連絡を取り合うなどして人脈を広げましょう。上司や親しい同僚に自分の目標を理解してもらうことで、サポートをしてもらえる可能性があります。また、自分と同じような道のりを歩んできた良き先輩を見つけるのもよいでしょう。
CHROに求められる資質とスキル
CHROになるまでの道のりは一通りではありませんが、次のような資質とスキルが望まれます。
- 人事または関連するビジネス分野の修士号
- さまざまな人事部門でのエクスペリエンス
- 個人、チーム、プロジェクトにおける管理職のエクスペリエンス
- リーダー的職務のエクスペリエンス
- 合併および買収のエクスペリエンス
- 優れたリスニングおよびコミュニケーションスキル
- 高度な問題解決スキル
- 優れた感情的インテリジェンス
- 労働文化の構築と改良における能力
- データおよびデジタル・リテラシー
- ビジネス洞察力
CHROの役割の進化
CHROは主に管理職としての役割から、CEOや他の役員と協力して取り組む信頼できるアドバイザーおよび戦略的パートナーとしての役割へと進化を遂げてきました。新型コロナウイルスのパンデミックでCHROは矢面に立たされ、従業員の健康と安全を守り、変動するガイダンスや業界の規制を順守しながら組織の経営を維持するという責務を負いました。また、雇用の凍結や従業員の不足によって、従業員をスキルアップする計画を迅速に策定し、人材不足に対処する創造的な方法を見出す必要にも迫られました。
2023年にコンサルタント会社Mercerが行った調査では、CHROが自身の就任時にもっと詳しく知りたいと考えていた領域として、人事データの分析とインサイト（41%）、人事以外の財務などのトピック（40%）、役員会との連携のあり方（39%）の3つが明らかになりました。CHROが捉えている役割の変化についての設問（複数回答可）では、調査回答者の79%が「混乱に直面した場合はより戦略的な管理を行う」を、60%が「テクノロジーや自動化の利用を増やす」を、54%が「予測分析への依存度を高める」を、41%が「組織全体でのスキル構築に注力する」を、それぞれ選択しました。
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業界全体で人材やスキルが不足している中で、CHROは、優秀な人材を維持するために従業員エクスペリエンスを向上させるというプレッシャーにさらされています。Oracle Fusion Cloud Human Capital Managementアプリケーション・スイートの一部であるOracle MEは、従業員一人ひとりのニーズに合わせてパーソナライズされたエクスペリエンスを提供することで、従業員のエンゲージメント維持に取り組む人事部門を支援します。Oracle MEのアプリケーションは、従業員の仕事活動や個人的活動についてガイドを提供する機能、即応性のある人事サービスを提供する機能、従業員のコミュニケーションを組織全体にわたって効率化する機能、従業員と上司の関係を強化する機能を備えており、従業員のつながりを構築して総合的な満足度を高めます。
CHROに関するFAQ
CFOの役割とは
人事組織のリーダーとして、CHROは採用、オンボーディング、トレーニング、報酬、パフォーマンス管理、企業文化、福利厚生その他の「人的機能」を、政府や業界の労働規制を順守しながら、企業が掲げる目標に沿って監督します。
CHROになるために必要な教育課程とは
ほとんどのCHROが、人事または関連するビジネス分野で学士号を取得しています。多くの人が人事の修士号またはMBAの学位を取得しています。
CHROとCEOの連携のあり方とは
CHROはCEOと協力して、主要なビジネス目標を支えるタレント・マネジメントやその他の人事戦略を策定します。すべての従業員の問題と、それらが組織に与える影響について、CEOに助言やインサイトを提供します。
CHROは、従業員の期待とビジネス・ゴールとの隔たりに直面しています。そうしたギャップを埋める方法をご紹介します。