デジタル・アシスタント(予測チャットボットとも呼ぶ)は、通常はインターネットを介して、利用者との会話をシミュレートする高度なコンピューター・プログラムです。
デジタル・アシスタントは、高度な人工知能(AI)、自然言語処理、自然言語理解、機械学習を使用して、学習しながら個人に合わせた会話体験を提供します。購入嗜好、持ち家の状況、場所、家族の人数などの履歴情報を組み合わせて、アルゴリズムが行動のパターンを識別するデータ・モデルを作成し、データが追加されるにつれてそれらのパターンを改善していきます。ユーザーの履歴、好みや、その他の情報を学習することによって、複雑な質問に答えたり、おすすめを提案したり、予測したり、会話を始めたりすることができます。
チャットボットは、文字または口頭による人間の会話をシミュレートして処理するコンピューター・プログラムであり、本物の人とコミュニケーションしているかのようにデジタル・デバイスを操作できるようにするものです。携帯電話に話しかけてお気に入りのコーヒーを注文する場合、チャットボットとやり取りしていることになります。また、サービスのチャットボットの1つを使用して、ライド・シェアリング・サービスに配車をリクエストすることもできます。これらは比較的単純な「会話」です。
デジタル・アシスタントとチャットボットは混同しやすいのですが、デジタル・アシスタントは、より複雑なやり取りを会話形式で処理できる高度なタイプのチャットボットです。例えば、「次の日曜日のフェニックス行きのフライトを、いつもの座席指定で予約して、空港までの交通手段も手配してください」といった複雑なリクエストにも、デジタル・アシスタントは対応することができます。このリクエストに応えるためには、デジタル・アシスタントは複数のソースにアクセスする必要がありますが、通常、チャットボットにはこの機能がありません。
おそらく、違いを理解するのに分かりやすい方法としては、デジタル・アシスタントはすべてチャットボットであるといえますが、チャットボットはデジタル・アシスタントであるとは限らないということを覚えておきましょう。
Oracle Digital Assistantを使用して独自のチャットボットを構築し、ビジネスを発展させる
すべてのデジタル・アシスタントが同じ機能を備えているわけではありません。デジタル・アシスタントは複数のソースからデータを引き出し、コンテキストを考慮に入れます。高度な自然言語処理で、ユーザーが発話または入力していることを処理する能力を持っています。高度な自然言語理解(NLU)により、ユーザーが発話または入力した内容を解析して、正確な回答を生成できます。高度なNLUでは、複雑な文を理解し、さまざまな要素から成るリクエストまたは質問の中の要素を分解して、正確な回答を返すことが可能です。
より高度なデジタル・アシスタントは、複数のタスクと複雑な質問を処理して、理解しやすい方法で人間と会話できます。これらのデジタル・アシスタントは、AIと機械学習を使用し、ユーザーの過去の行動に基づいて好みを理解して学習します。その理解に基づいてユーザーの行動を予測し、履歴と好みに基づいておすすめを提案します。このように、デジタル・アシスタントと連携すると、ニーズに合わせてカスタマイズされたエクスペリエンスを実現できます。
消費者向けとしては、AppleのSiriやMicrosoftのCortanaなどのデジタル・アシスタントは、多くの一般的な質問に答え、ユーザーのプロファイル、過去の行動、およびその他の情報に基づいておすすめを提案できます。デジタル・アシスタントの助けを借りて、渋滞を避けながら道順を教えてもらい、注文したコーヒーを受け取り、ホテルにチェックインするといったことがすべて可能です。数日間旅行する場合は、デジタル・アシスタントに自宅近辺の天気予報を知らせてもらい、外出中に暖房を弱めてもらうことができます。
ビジネス向けとしては、デジタル・アシスタントは、請負業者と顧客に便利な単一の連絡窓口となります。デジタル・アシスタントが最もよく使用されているのは、カスタマー受付センターで着信する問い合わせを管理する場面です。また、新入社員の研修など、社内でも使用されます。
IT運用向けとしては、従業員サービスを自動化し、より多くの人々がそれらのサービスにアクセスできるようにすることで、サービス管理エクスペリエンスを向上させるためにチャットボットがよく使われています。インテリジェントなチャットボットを使用すると、パスワードのリセット、システム・ステータスの更新、システム停止のアラート、消耗品の注文、ナレッジ管理などの一般的なタスクを24時間体制で簡単に自動化して利用できます。
提供されるサービスは、デジタル・アシスタントの自然言語機能の種類と品質、AI、および使用されるその他のテクノロジーによって異なります。デジタル・アシスタントが高度になるほど、処理できるビジネス機能が増えます。たとえば、最新のデジタル・アシスタントは次のことができます。
ビジネス・データの統合
従業員向けのセルフサービス・デジタル・アシスタントが普及し始めています。これらの新しい高度なアプリはビジネスのコスト削減になり、従業員は利便性を気に入ります。これまで従業員は正しいフォームを見つけ出したり、複数のWebサイトにアクセスしたり、時間をかけて面倒な手動のプロセスを完了しなければなりませんでしたが、その代わりにデジタル・アシスタントを使用して簡単に自分のプロファイルを更新したり、生まれた子どもを家族保険に追加したり、休暇の残り日数を確認したりすることができます。デジタル・アシスタントは、人材管理(HCM)、エンタープライズ・リソース・プランニング(ERP)、顧客関係管理(CRM)など、企業全体のシステムからの情報を統合し、従業員とのやり取りするための1つのメッセージング・フローを作成できます。CRMをマーケティング自動化ツールと組み合わせると、顧客に適切にマーケティングを行えるようになり、カスタマー・エクスペリエンスが向上します。
ビジネスのために会話型AIができること(PDF)の詳細をご覧ください。
個人向けでは、デジタル・アシスタントは、家、車、その他の場所で利便性と楽しみをもたらします。家の暖房やホーム・セキュリティの管理など特定の目的に使用すると、お金の節約になり、面倒な作業から解放されます。
また、企業はデジタル・アシスタントを使用することで、特に効率の改善と、従業員と顧客により良い支援を提供するうえで多くの利点を見出しています。デジタル・アシスタントを使用すると、次のことを実現できます。
使いやすく、手間をかけないアクセス
デジタル・アシスタントの利点の1つは、ユーザーがアシスタントにアクセスするためだけに特別なアプリをダウンロードしてインストールする必要がないことです。代わりに、次のような既存のソリューションを通じてデジタル・アシスタントを利用できます。
AI、NLP、および機械学習の継続的な進歩により、将来のデジタル・アシスタントはさらに「賢く」なり、より自然な会話を提供し、より複雑な質問に答え、より洞察に富んだおすすめを提案します。AIを最新の5Gテクノロジーと組み合わせると、おすすめと予測がより迅速に提供できるようになり、デジタル・アシスタントに高精細ビデオ会議などの高度な機能が組み込まれる可能性があります。
ゆくゆくは、多くの人々が自宅、職場、またはどこにいても操作できるデジタル・アシスタントを手にすることになり、効率的に暮らしながら、自分のことに時間を使えるようになるでしょう。デジタル・アシスタントを使用すると、面倒な作業から解放されてよりクリエイティブで革新的になれるため、戦略的なアイデアや複雑な活動により多くの時間を費やすことができます。ポケットに入れて持ち運べるアシスタントが冗長な日常タスクを適切に処理してくれるため、そうした作業に時間を費やさなくてすみます。
スマートフォンの普及により、デジタル・アシスタントはほとんどの人の日常生活の一部となっています。多くの人がAppleのSiriやAmazonのAlexaと毎日やり取りしています。職場でも、チャットボットやデジタル・アシスタントの使用が増えています。作業環境のニーズを満たすためにはこれらのユーザー・インターフェイスをもっと複雑にする必要がありますが、このテクノロジーは現在もう利用可能です。次世代のデジタル・アシスタントがビジネスを変える3つの方法