桜木紫乃『ラブレス』 釧路の夕日が照らす女の生きざま
桜木紫乃『ラブレス』 釧路の夕日が照らす女の生きざま
それでも生きていく。理恵も自分も。からりと明るく 次の場所で――。
まだ70代の一人暮らしの女性が、意識のない老衰のような症状で病院に運ばれる。その手には、小さな位牌(いはい)が握られていた。だれの位牌なのか。彼女はどんな人生を送ってきたのか。時は一気に1950年、彼女の中学生時代へとさかのぼる。
その来し方は、波瀾万丈(はらんばんじょう)だ。内陸の開拓小屋での貧しい暮らし、進学断念、奉公先での…