日本では葬儀が終わってからも定期的に法事を営む文化があります。法事と法要は似ているため混同されがちですが、実は違いがあるのをご存じでしょうか。本記事では法要を行う意味や年忌法要のタイミングなどを紹介します。
これから法事に参列する予定がある方や、施主(せしゅ)として法事を催す予定がある方は、ぜひ最後までご覧ください。
法事とは
家族や親族が亡くなって葬儀を執り行った後、一周忌や三周忌などの法事を行います。ここでは法事の基礎知識を解説しますので参考にしてください。
法事を行う意味や目的
法事とは仏教行事全般を指し、お盆やお彼岸なども含まれます。僧侶・遺族・親族が一堂に会して故人の冥福を祈る宗教的行事は、法事だと認識して間違いないでしょう。
なぜ法事を行うかというと、葬儀後時間がたってからも故人をしのんで思い出す機会を設けるためです。また普段は接点の少ない仏教の思想や教えを知る機会でもあります。昨今は仏教と縁の薄い方が多くなっているため、法事を通じて学べることがあるでしょう。
法事と法要の違い
法事と法要は混同されがちですが、改めて違いを説明すると、そもそもの概念が異なります。法要は一つひとつの行事を意味する言葉で、より細分化された概念です。
法要は別名「追善供養」と呼ばれ、忌日法要と年忌法要の2種類に分類されます。例えば四十九日や一周忌などが分かりやすいでしょう。葬儀が終わってからも定期的に故人の冥福を祈り弔う機会を設けることで、親族同士のつながりを保ってきた側面もあります。
なお最近では少子高齢化により親族が減った家庭が多く、法要を省略する家庭は少なくありません。
法事を行うタイミング|忌日法要
ここからは忌日法要について解説します。一般的には忌明けとなる四十九日法要で区切りを付けるケースが多いかもしれませんが、実はそれ以降にも法要を催す機会があります。忌日法要について知りたい方は参考にしてください。
忌日法要とは
忌日(きじつ・きにち)法要とは、故人の命日から数えて一定の期間ごとに催される法要です。忌日は命日と同じ意味ですが、後者の方が広く知られているでしょう。故人の冥福を祈り菩提を弔うために実施され、仏教の教えに基づいています。
忌日法要は7日ごとに行われ、7回目にして最も重要とされるのが四十九日法要です。本来はその間にも法要が存在するものの、現代では省略されるのが一般的です。家庭や仕事の都合などで全ての法要を実施できない方が多いため、仏壇に手を合わせるだけで済ませる場合もあります。
初七日(7日目)
初七日(しょなのか・しょしちにち)法要とは、故人の逝去から7日目に執り行う法要でお骨上げから2〜3日後が該当します。仏教では人は死後7日目までに三途の川を渡るといわれており、きわめて重要な期間なので、参列者が祈りを捧げて供養します。
初七日と葬儀は別々の行事ですが、最近は簡略化のため一緒に済ませるようになりました。その際は「繰り上げ法要」とも呼ばれます。
初七日法要について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
>>初七日法要とは?行う時期と準備や流れ、香典返しの相場を解説
二七日(14日目)
故人が亡くなってから14日目に行うのが二七日(ふたなのか)法要です。三途の川を渡った故人は奪衣婆(だつえば)という鬼に衣服をはぎ取られ、罪の重さを量られた後に釈迦如来の裁きを受けるとされています。
二七日法要の目的は、故人が生前に背負った盗みの罪を少しでも軽くすることです。法要を通じて現世から故人へ善を送り、多少でも罪が軽くなるよう祈りを捧げます。
故人が極楽浄土へ行ける道筋を見つけられるよう、不祝儀が残らないとされる食べ物や線香などの消耗品をお供えします
三七日(21日目)
命日から3週間後に当たる21日目には、三七日(みなのか)法要を行います。またの名を洒水忌(しゃすいき)といいます。基本的に法要の規模は小さくなり、僧侶・親族のみで行われるケースが多数で、必ずしも実施するとは限りません。
三七日法要では三度目の審判が行われるとされ、参列者は故人が極楽浄土へ行き成仏できるよう祈ります。二七日法要と同じく消えものをお供えするのが一般的で、お菓子や線香などが定番です。なお故人の好物をお供えしても良いとされます。
四七日(28日目)
四七日(よなぬか・ししちにち)法要とは、故人の命日から数えて28日目に行う法要です。こちらも省略する家庭が多いでしょう。
四七日には冥界の五官王の一人である普賢菩薩が故人の裁きを行うとされ、生前にどれだけ嘘をついたかが調べられます。遺族は現世で祈りを捧げ、なるべく故人の罪が軽くなるよう祈ります。なお五官王の「五官」とは五感を意味しており、視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚と同義です。
五七日(35日目)
故人が亡くなってから35日目には五七日(いつなのか・ごしちにち)法要を実施します。別名小練忌(しょうれんき)とも呼ばれ、初七日と同じく大切な法要に数えられます。しかし最近は省かれるケースが大半です。
故人は五七日に地蔵菩薩(=閻魔王)による裁きを受け、俗世で犯した罪が全て明らかになった後、来世に生まれ変わる世界が決まります。故人にとっては辛い局面であるため、遺族が法要を営むことによって苦しみを軽減する役割を担います。なお地域によっては五七日法要をもって忌明けとするところもあるようです。
六七日(42日目)
六七日(むなのか・ろくしちにち)法要とは、故人が亡くなってから42日目に行う法要です。またの名を檀弘忌(だんこうき)といいます。規模は小さくなり、参列者は親族のみとなります。ここまでくるとあえて実施しない方も多いのではないでしょうか。
六七日法要では、変成王(へんじょうおう)から生まれ変わるのに必要な条件を言い渡されます。その他にも弥勒菩薩(みろくぼさつ)により過去の罪を裁かれ、来世で修行を積むよう伝えられるともいわれます。
七七日(49日目)・満中陰
七七日(しちしちにち)法要とは、いわゆる四十九日を指します。満中陰(まんちゅういん)という別名もあり、法要=四十九日という印象が強いでしょう。
仏教では四十九日が忌明けと定められており、盛大に営まれます。僧侶や親族だけでなく、故人の友人・知人なども招くためおのずと規模は大きくなりがちです。これ以降は遺族が日常生活に戻り、喪に服す期間が終わります。
七七日では泰山王(たいせんおう)が故人の生まれ変わる世界を決めるとされており、最後の審判が下るため遺族が善行を積んで供養する必要があります。
百カ日(100日目)・卒哭忌
百カ日とは、故人の命日から100日目に行う法要です。卒哭忌(そっこくき)と呼ばれることもあります。
通常は四十九日をもって忌明けとしますが、そのときに極楽浄土へ行けない場合もあります。そこで故人が成仏できるように執り行われるのが百カ日法要です。参列者は近親者が中心で、ときには「しのぶ会」として故人の友人・知人を招くケースも見受けられます。
たいていの方は四十九日で一区切りとすると考えられますが、もし実施する予定があれば、僧侶への依頼や会食の手配など早めに準備すると良いでしょう。
法事を行うタイミング|年忌法要
ここからは年忌法要について解説します。忌日法要と同じく年数の経過と共に省略される割合が高くなり、最近では三回忌で終わりにする家庭が増えました。これから年忌法要を実施する予定がある方は参考にしてください。
年忌法要とは
法事と聞いてイメージするのは、恐らく年忌法要でしょう。いわゆる「○回忌」と呼ばれる仏教行事で、故人の祥月命日に行われます。
一周忌を皮切りに三回忌・七回忌と続いていき、三十三回忌または五十回忌で弔い上げとするのが一般的です。おじ・おば・いとこなどの親族が少なくなった現代では、そこまで法要を実施できる家庭は少ないでしょう。
一周忌
一周忌は故人が逝去してから一年後の命日に営まれる年忌法要を指します。本来は祥月命日(故人が亡くなったのと同月同日)に法要を行いますが、日程の都合次第では前倒しになることもあります。
最初にして重要な法要と位置付けられており、遺族を筆頭に親族や故人の友人・知人が招かれるケースが多数です。式次第は四十九日法要と変わりなく、僧侶の読経や焼香をたて会食「お斎(おとき)」に移行するのが慣わしとなっています。
三回忌
三回忌とは故人の祥月命日から二年後に行われる年忌法要です。故人が亡くなった年を一年目に含めて数えるため、これ以降は法要の実施時期が実際よりも一年短くなると覚えておくと分かりやすいでしょう。
一回忌と比べて規模を縮小する場合が多く、家族だけで実施する家庭も少なくありません。親族を招くなら、故人の兄弟姉妹や孫までが良いでしょう。祥月命日に行う必要はなく、一回忌と同様に日にちを前倒しするケースがあります。
七回忌
故人が亡くなってから6年目の命日に行うのが七回忌です。一周忌や三周忌と比較してさらに規模が小さくなり、基本的には遺族と親族のみで集まるケースが多いでしょう。
前提として、仏教では7日や7年などを節目と捉えて重んじる考えが根底にあります。本来はきちんと七回忌を実施すべきですが、それぞれ多忙で都合がつかないこともあります。従って法要を省く方は珍しくありません。
十三回忌
十三回忌は故人の祥月命日から12年目に実施する年忌法要で、故人の知人や友人などが参列するケースはほとんどありません。そもそも三回忌以降は省略する方が多いと考えられます。
式次第は一回忌と変わらず、僧侶の読経や焼香があって会食をする流れです。なお七回忌より後になると、複数の年忌法要をまとめて執り行う(併修)ことが可能です。家族の負担を減らしたい、親族が少ないなどの理由があれば検討してみてはいかがでしょうか。
十七回忌
故人がこの世を去ってから16年目の節目に営むのが十七回忌です。故人の生前に思いをはせつつ、しめやかに法要を執り行います。
十七回忌にこれといった決まりはなく、親族以外の参列者を招いて法要を催す家庭も見受けられます。恐らく小規模な法要を希望する方が多いと思われますが、施主の意志によって内容はさまざまです。
三回忌より後になると略礼装でも問題なく、いわゆる「平服でお越しください」という案内がこれに当たります。
二十三回忌
二十三回忌は故人の祥月命日から22年目の節目に行われる年忌法要です。恐らく名称は知っていても参列した経験のない方が多いのではないでしょうか。
ここまで年月がたつと参列できる親族が限られており、実施したくてもできない家庭が多数だと思われます。そもそも喪主やその家族が鬼籍に入っている場合、必ずしも執り行う必要はありません。ただし宗派によって扱いが異なり、浄土真宗では重要な法要として認識されています。
二十七回忌
故人が亡くなってから26年目には二十七回忌が営まれますが、単独というよりは併修する形で行われることが多いと考えられます。なお宗派によっては二十五回忌に置き換える場合があります。
葬儀から四半世紀もたつと、残っている家族や親族が片手で数えられるくらいしかいない状況になっているでしょう。故人を悼む気持ちがあれば、法要にこだわる必要はありません。ホテルやレストランなどでカジュアルに法要を執り行うのも一つの手段です。
三十三回忌
三十三回忌は俗にいう「弔い上げ」の年忌法要で、故人の死から32年目の命日に当たります。仏教では三十三回忌をもって故人が極楽浄土へ旅立つといわれ、一つの区切りとして認識されています。
法要を執り行う場合、最後を締めくくるためにあえて規模を大きめにする家庭も見受けられます。家族や親族一同の他、友人・知人なども招いて盛大に故人を供養するのも良いでしょう。
また、弔い上げを早める方法を知りたい方は下記を参考にしてください。
>>法事は何回忌まで行う?法要との違いや弔い上げのタイミング
三十七回忌
故人が亡くなってから36年目に行う法要が三十七回忌です。弔い上げとなる三十三回忌を済ませている場合は実施しません。あの世にいる故人へ功徳を届け、悟りの境地へ近づけるよう祈りを捧げます。
施主が鬼籍に入っている場合は、その子どもや孫が施主の立場を引き継ぎます。呼べる親族がいなければ、家族だけで執り行いましょう。
四十三回忌
四十三回忌は故人の祥月命日から42年目に実施する年忌法要で、実際には省略される場合が大半です。故人を知っている家族や親族がお亡くなりになっていると想定され、現代では形骸化しています。
地域や家庭によっては他のご先祖様と一緒に法要を行うケースもあり、慣習によるところが大きいでしょう。無理に実施する必要はなく、一般教養としてそのような法要があると知っておくと良いです。
四十七回忌
故人が亡くなってから46年目の節目に実施するのが四十七回忌です。およそ半世紀が経過しているため、小規模な行事になるのは致し方ないでしょう。特別な準備は必要なく、通常の法要と同じものと考えて差し支えありません。
五十回忌
年忌法要の最後を締めくくるのが五十回忌で、故人の没後から数えて49年目の命日に営まれます。亡くなって50年もたてば誰もが極楽浄土に行けるため、数ある法要の中でも特別な意味がある行事です。
三十三回忌を実施せず、四十七回忌まで法要を継続してきた場合は五十回忌が弔い上げとなります。これ以降はお寺へ永代供養を依頼し、僧侶に菩提を弔ってもらいます。
法事の当日の流れ
最後に法事の流れを解説します。当日の手順はおおむね決まっており、年忌による違いはほぼありません。ただ流れを知らないとどのように進めるのか分からないため、事前に把握しておくと良いでしょう。
僧侶が入場・法要開始
法事の参列者が全員席に着いたら、僧侶の入場をもって法事が開始されます。施主が「ただ今より××(故人の戒名)の〇回忌法要を執り行います」と簡潔に開式の挨拶を述べ、参列者へ感謝と労いの言葉を掛けるのが一般的です。
施主は僧侶の席から一番近い場所に座っている方で、参列者の並びは故人との血縁関係が近い順になっています。
僧侶の読経・焼香
施主の挨拶が終わると引き続き僧侶の読経と焼香があります。本来お経は誰でも仏様の教えを理解できるようにまとめられたもので、故人ではなく参列者のために唱えます。
焼香は読経の最中に行われるので、案内されたら焼香台へ向かいましょう。前方の席に座っている方から順番に声を掛けられます。
僧侶による法話・退場
続いて法話が行われます。お経よりも分かりやすく仏教を説くのが一般的です。焼香のときよりもリラックスした雰囲気になる場合が多いでしょう。
これといって決まった話題はなく、僧侶によって内容はさまざまです。なお法話は省略されることもあり、その場合は僧侶の退場によって法事が実質的に終了となります。
施主の挨拶
法事の最後を締めくくるのは施主の挨拶です。開始の挨拶と同様、手短に切り上げます。改めて参列者に来てくれたことへのお礼を伝え、「今後もご支援よろしくお願いします」などと述べて区切りを付けるのが一般的です。
施主の挨拶には定型文があるため、何を話せばよいのか悩んだらインターネットや書籍などで調べておきましょう。
会食
一通り法事が済んだところで会食へ移行します。別の会場で会食をする場合は移動のアナウンスを行い、参列者を案内する必要があります。
会食の席では僧侶が上座に着き、施主はその隣に座るのがマナーです。冒頭で会食の挨拶を簡単に述べ、献杯の音頭を取ります。施主は法要を取り仕切る役目なので、食事の間も適度に場を盛り上げて和やかな雰囲気を演出しましょう。
参列者に引き出物を渡す
会食後には施主が参列者に引き出物を渡します。引き出物とは故人に対する感謝の気持ちを示すために用意する品物で、一人ひとりに手渡します。法事の参列者が多い場合は、あらかじめ引き出物を席に置いておくのが一般的です。
引き出物の中身は多岐にわたり、故人が生前に好きだった物を選ぶこともあるようです。
まとめ
法事には忌日法要と年忌法要の2種類があり、それぞれ日数や年数ごとに細かく分けられています。かつては一連の法要が執り行われていましたが、時代の変化によって全て実施するのが難しくなりました。
これから法要を行う予定がある方は、どこまで執り行うか考えてみると良いでしょう。大切なのは故人を思い出し、感謝の気持ちを伝えることです。法要の形にこだわらず、日頃からお墓参りに行ったり仏壇に手を合わせたりするだけでも供養になります。
株式会社サン・ライフでは、法要に関するお問い合わせも受け付けています。専門スタッフがお応えしますので、お気軽にご連絡ください。