葬儀の参列者からいただく香典にはさまざまなマナーや決まりがあり、初めて喪主を務める方にとっては少し複雑に思えるかもしれません。本記事では喪主が知っておくべき香典についてのマナーや注意点などを解説します。
また香典を辞退したものの参列者から手渡されたときの対応など、イレギュラーなケースについても詳しく解説しているので、ぜひ最後までご覧ください。
喪主は香典を出さないのが基本
喪主を務める場合は基本的に香典を出しません。なぜなら香典は通夜や告別式に参列した方が遺族に渡すもので、故人への追悼の気持ちを込めるとともに、家族への労いや葬儀費用のサポートとしての意味も含まれているためです。
喪主は葬儀全体を取り仕切る役割とともに、葬儀にかかった費用を負担する主催者の立場です。そのため、喪主は香典を出す側ではなく受け取る側であるのが一般的でしょう。
ただし喪主と施主が違う場合、喪主は葬儀の取り仕切り役、施主は葬儀費用を負担する役と、役割を分担するケースがあります。その場合は喪主が施主に葬儀費用のサポートとして香典を出すこともあります。一方で喪主と施主が分かれていても香典を渡さないケースがあるので、親族などに相談してから決めましょう。
喪主が知っておくべき香典マナーとは
ここからは喪主が知っておくべき香典マナーを4つ紹介します。香典の使い道や辞退するときのマナーなどを解説しますので、喪主として葬儀の進行役を務める際の参考にしてください。
香典は喪主のもの
親族や会社関係の方などいただいた方に関わらず、全ての香典が喪主のものになります。
香典は「故人への最後の贈り物」という意味を持ちます。しかし葬儀や今後の法要にかかる費用軽減の意味が大きいため、葬儀費用を負担する喪主への贈り物と考えてもよいでしょう。
喪主に兄弟がいる場合は余りを分割して渡すこともありますが、基本は全て喪主が受け取っても問題ありません。
香典を辞退する場合は事前に通知する
家族葬や一日葬など小規模の葬儀を執り行う際、香典を辞退することがあります。その場合は葬儀の案内状もしくは訃報を知らせる際に「誠に勝手ながら香典は辞退します」と一言記載しておくのがマナーです。
また葬儀当日香典を持ってこられた方に対しては、受付にて「香典は辞退しております」と丁寧な言葉でお断りしましょう。
どうしても受け取ってほしいと言われた場合は、押し問答になるのも失礼に当たるので例外として受け取っても問題ありません。ただし他の参列者の気持ちに配慮した対応が必要です。
より詳しい香典辞退の伝え方を知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
香典辞退の伝え方|家族葬で香典辞退する際の失礼のない伝え方とは
香典は葬儀費用やお返しに使用する
頂いた香典はまず香典返しの費用として使用します。香典返しは頂いた方によってかかる金額が異なりますので、どの方にいくら香典をいただいたのかきちんと記録しておきましょう。
香典返しに使ったとしても余るようなら、その後の花代などの祭祀費用に充てるのが一般的です。葬儀後は四十九日の法要などもあるので、全額使わずに一部残しておくと安心です。
香典は余ったらお布施に回す
香典返し、葬儀費用に使用しても香典が余ったときは、お布施や寄付に回せます。お布施とは読経や戒名を付けてもらったことに対する僧侶への感謝の意味があり、葬儀以外でも都度の法要に必要です。
その他にも故人が生前懇意にしていた団体や施設などに寄付するという選択肢もあります。遺言書に明記されている場合はそちらへ、明記されていない場合は遺族が話し合って決めましょう。
もし香典返しをせずに寄付をしたい場合は、その旨をきちんと参列者の方へお知らせするのがマナーです。団体によっては指定の住所に挨拶状を送付してくれるところもあるので、事前に確認しておくとよいでしょう。
香典返しで喪主が気を付けるべき点
香典返しで喪主が気を付けるべき点は5つあります。香典は参列者の方の厚意で頂くので、香典返しは誠意ある対応を心掛けましょう。マナーや決まりをきちんと理解して、失礼のない香典返しをすることが大切です。
即日返しと忌明返しがある
香典返しには即日返しと忌明返しがあります。即日返しとは葬儀当日に受付か会食の席でお渡しすることを指します。返礼品と混同して理解している方もいらっしゃいますが、香典返しと返礼品は分けて渡すものなので注意しましょう。
忌明返しとは、喪に服する期間の「忌中」が明け、普段の生活に戻る「忌明け」の後に香典返しを行うことを指します。忌中は宗派によって異なりますが、仏教であれば35日または49日が忌明けのタイミングとされるのが一般的です。
挨拶状の書き方を知っておく
香典返しを郵送する場合は、感謝の気持ちを込めて挨拶状を付けて送るのがマナーです。挨拶状の書き方で気を付けるポイントは「喪主の視点で書く」「句読点を付けない」の2つです。
<挨拶状例文>
謹啓 皆様方にはますますご健勝のことと存じます このたびは、故人である私の夫○○の葬儀におきまして お忙しい中にもかかわらずご参列いただき また心温まるご厚意を賜り 心より感謝申し上げます 皆様のご支援のおかげで 無事に●月●日に四十九日の法要を終えることができました その感謝の印として 僭越ながら心を込めた品物をお送りいたしました どうか お受け取りいただけますようお願い申し上げます 直接お会いしてお礼を申し上げるのが礼儀であるとは存じますが この書面をもって代わりにご挨拶させていただきます 敬具 令和●年●月●日 施主 ○○ |
これからの法要などの供養が滞りなく終わるようにという意味を込めて、文面には句読点を使わずに書きます。読点を打ちたい箇所は、スペースを空けて書くと読みやすくなるでしょう。
なお、お礼状の詳しい書き方は下記でも紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
家族葬の香典返しに添えるお礼状とは?例文や書き方・注意点など分かりやすく解説
香典返しは半返しが一般的
香典返しの金額の相場は、頂いた香典の2分の1もしくは3分の1程度が一般的です。2分の1程度を返すので「半返し」と呼ばれます。例えば香典を5,000円頂いた場合は2,000~3,000円程度の品物を渡すとよいとされています。
ただし、高額な香典をいただいた場合や一家の働き手が亡くなり、未成年の子どもがいる場合などは香典返しが3分の1程度でも問題ありません。また昔であれば、地域によって香典返しの相場は異なっていましたが、今はあまり地域差を意識するということも少なくなってきています。
香典返しは消え物を選ぶのが基本
香典返しは「不幸を残さない」という意味を込めて、消え物と呼ばれる形に残らない物を送るのが基本です。コーヒーやお茶、調味料、海苔、お菓子、洗剤などの消耗品がよいでしょう。
最近はカタログギフトも人気です。金額に合わせてさまざまな品物が掲載されており、好きな物を選んでもらえます。
一方で香典返しにタブーとされるのは肉や魚、お酒、鰹節、昆布などです。肉や魚は殺生を連想させる、お酒や鰹節、昆布は慶事に使われることが多いといった理由から香典返しにはふさわしくありません。
掛け紙の選び方
香典返しには故人への敬意と参列者への感謝の気持ちを込めて、お祝い事に使われる「のし紙」ではなく「掛け紙」を掛けましょう。
掛け紙とは結び切りの水引が印刷された紙のことを指し、仏式の葬儀であれば加えて蓮の花が描かれています。他宗教であれば、結び切りの水引のみが印刷されている掛け紙を使いましょう。結び切りは一度結ぶとほどけない結び方のことで、「二度と繰り返さない」という意味が込められています。
水引の色は黒白が一般的ですが、地域によっては黄白が使われることもあります。不安な方は香典返しを購入する店舗で確認しましょう。
水引の上に書く表書きは「喪中見舞い」「志」といった言葉を書き、その下に喪主の名前を書きます。喪主の名前の表記は、○○家、喪主の姓のみ or 姓名が一般的です。
また即日返しなど四十九日より前に香典返しをする場合は、表書きを薄墨で書くのがマナーです。薄墨を使う理由は2つの説があり「突然の不幸で墨をする時間もなかった」もしくは「家族を失った悲しみでこぼれた涙が墨を薄くしてしまった」などを表すとされています。四十九日を過ぎると忌明けとなるので、黒色で書きます。
香典を辞退したのに渡されたときの対応
香典を辞退したものの渡されたときは、受付で長くやり取りをするのも失礼なのでありがたく受け取りましょう。他の参列者も大勢いる場合は、香典を受け取っているところが目に入らないようにするのもマナーです。
またこの場合の香典返しは不要で、忌明けの際に手紙などで感謝の気持ちを伝えるとよいでしょう。香典を渡した相手も辞退の意思を理解した上で香典を渡しているため、後日香典返しを送らずとも失礼には当たりません。
香典に関するよくある質問
「故人の宗旨宗派が分からない」「香典袋は金額に合わせるのか」など、初めて喪主を務める場合や、葬儀に参列する場合は疑問に思うことが多いでしょう。ここからは香典に関するよくある質問を4つまとめました。
親や子どもの葬儀で香典を包む必要がある?
親や子どもの葬儀で喪主を務めるときは、香典を包む必要はありません。ただし親の葬儀で兄弟が喪主を務める場合や、結婚して苗字が変わった娘が亡くなった場合などは他の参列者と一緒になり、香典を包むのがマナーです。
香典の金額の相場は、例えば親の葬儀であれば以下のように年齢によって変わります。
- ・20代:3万~10万円
- ・30代:5万~10万円
- ・40代以上:10万円程度
また、子どもの葬儀であれば5万〜10万円といわれています。
喪主の妻は香典が必要?
喪主の妻は喪主の家族として一緒に葬儀を取り仕切るため、基本的に香典は必要ありません。ただし喪主と施主が異なる場合は、施主に対して香典を渡すケースがあります。
喪主と施主の違いは、実質的な費用を負担するか否かにあります。喪主は葬儀の進行役、施主は葬儀にかかる費用全般を支払う人です。施主の金銭的負担をサポートする意味も込めて、他の参列者と同様に香典を包むのが一般的です。
故人の宗旨宗派が分からない場合は?
故人の宗旨宗派が仏教かキリスト教か分からないときは、香典の表書きを「御霊前」としておきましょう。ただし故人が浄土真宗を信仰していた場合は「御霊前」はふさわしくないので注意してください。
仏式であることは分かっているときは、「御香典」としておくと、どの宗派であっても使用できます。水引は白黒や双銀などの結び切りを選ぶとよいでしょう。
また宗派ごとの香典の詳しい書き方はこちらでも解説していますので、参考にしてみてください。
香典の書き方は宗派ごとに違う|正しい書き方と基本的なマナーを解説します!
香典袋は金額に合わせた方がいい?
香典袋は包む金額に合わせて変えることが一般的です。以下の表にまとめているので、香典袋に迷われた際は確認してください。
香典の金額 |
香典袋の種類 |
3,000~5,000円 |
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1万円~2万円 |
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3万円~5万円 |
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6万円~10万円未満 |
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10万円以上 |
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また以下の記事では香典袋への正しいお札の入れ方について詳しく解説していますので、こちらも併せてご覧ください。
まとめ
香典にはさまざまなマナーがあるので複雑に感じるかもしれませんが、事前に知識を入れておけば慌てることなく対応できます。参列者の故人への気持ちである香典は、失礼のないようにマナーを身に付けて受け取りましょう。
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