不動産の相続税対策まとめ|生前はもちろん相続開始後でもできること

2024.07.29更新

この記事の監修者

秦 光一郎
秦 光一郎

税理士

不動産の相続税対策まとめ|生前はもちろん相続開始後でもできること

相続税の課税の実情と課税方法、相続税対策の概要などを見て、相続対策のため押さえておいて頂きたいポイントをご説明します。

この記事のポイント
  • 相続税対策は一般的に生前に行うものがほとんどです。
  • しかし、不動産所有の場合は生前と相続開始後に行うものがあるためあらかじめ準備をしておきましょう。
  • 揉めない相続税対策を行うためにも信頼できる士業関係者に相談することをおすすめします!

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目次

家や土地を相続した!相続税はいくら払わないといけない?

国税庁および東京国税局が公表している統計資料によれば、令和元年度の相続税の課税事績は以下の通りです。

令和元年度課税事績

全国
東京国税局管内
(東京、神奈川、
千葉、山梨)
被相続人数(人)1,381,093276,925
相続税申告書提出者数(人)115,26736,145
(内、相続税額無)(人)32,53413,373
相続人の数(人)254,51779,644
課税価格(億円)157,84358,038
(内、相続税額無)(億円)16,6446,160
相続税額(億円)19,7548,692
課税価格(万円)※
13,69416,057
(内、税額無)(万円)※5,1164,606
相続税額(万円)※1,7142,405
※1人当たり
令和元年度に日本全国でお亡くなりになった方(以下、「被相続人」といいます)は、138万人、そのうち相続税の申告対象となった方は、11.5万人で、およそ8.3%、12人に1人です。他方、東京国税局管内では、27.6万人がお亡くなりになり、相続税の申告対象となった方は、3.6万人で、およそ13%、7.7人に1人でした。

被相続人1人当たりの相続人の数は全国、東京国税局とも2.2人。相続人1人当たりの取得財産の課税価額は、全国平均1億3,694万円、東京国税局1憶6,057万円、1人当たりの納税額は、全国平均1,714万円、東京国税局2,405万円、税負担率は全国平均12.5%、東京国税局15%でした。都市部にお住いの方の課税割合、財産価額、納税額、税負担率がいずれも高いことがわかります。

東京国税局管内では平均すると1,000万円の財産を取得した方は、150万円程度の相続税を納付していますこの1,000万円が土地などの不動産である場合には、この分の相続税150万円は相続人が捻出することになります。

ちなみに、課税割合13%、税負担率15%というのはあくまでも東京国税局管内の平均値です。23区内や政令指定都市に不動産などをお持ちの場合、もう少し高い割合で課税され、もう少し多く税負担を求められると想定されます。

相続税はどのように決まる?

相続税法は、人がお亡くなりになった時を「相続開始」といいます。相続開始の時点を基準として、相続などにより財産を取得した人ごとに「各人の課税価格」を集計し、これを合計して「課税価格の合計額」を算出します。

生前、相続開始後にできる不動産相続税対策のまとめ

相続税対策は、生前に行っておくべきものがほとんどですが、相続開始後にできる相続税対策もあります。ここでは不動産の所有者に知っておいて頂きたい相続税対策について、生前と相続開始後に分けて代表的なものをご紹介します。

【生前】賃貸アパートを建てる

土地の相続税評価額は、更地のときが最も高く評価されます。他方、人に貸すと利用が制限されるため、評価が減額されます。不動産を所有している方がご自身の土地に賃貸物件を建築し、相続税の節税を図ることは昔から使われている手法です。

土地の所在地域により異なりますが、賃貸物件の建築により土地の評価額は更地のときに比し、18~24%程度減少します

【生前】資産管理会社を設立する

多くの不動産の所有者が取り組む相続税対策として、資産管理会社の設立があります。資産管理会社の運用方法はさまざまですが、現在では実際に不動産を資産管理会社へ売却してしまう方法が安全です

個人所有の不動産を資産管理会社へ移管することで、所有財産の種類が不動産から有価証券(資産管理会社の株式)や現預金、金銭債権等にスイッチします。

売却した翌年に一時的に所得税などの負担が増える場合がありますが、有価証券や金銭債権は不動産に比し、取り扱いがやさしい財産です。登記や取得税を考えずに分割贈与できるからです。

また、有価証券は不動産とは異なる方法で相続税評価額を算定しますので、結果として財産の評価額が減少する場合が多いです。

さらに、賃貸収益が資産管理会社へ移管することで、給与等として事業承継世代へ所得分配をしやすくなり、ご本人の相続財産の増大を避けることができます死亡退職金の活用も見込めるなど、相続税対策の幅が広がります

【相続開始後】減額要因を探して評価額を下げる

相続税における土地の評価は、市街化区域であれば路線価方式、それ以外の区域では倍率方式が用いられています。

路線価方式とは、国税庁が各道路に付した路線価を対象となる土地の地積に乗じて算出する方法であり、倍率方式とは、その土地の固定資産税評価額に地目に応じた倍率を乗じて算出する方式です。

しかし、土地にはさまざまな個別の事情があり、路線価に地積を乗ずるような単純な方法ですべての土地の価値を測定できるものではありません。建築できる建物が制限される土地などは評価を減額することが認められています。

たとえば、都市計画道路の予定地や高圧線下の土地、セットバックが必要になる土地、騒音が激しい、墓地の隣、がけ地、傾斜地、高低差がある、地盤が低い、帯状である、広大である、無道路地等は、土地の評価の減額要因となります。

土地の評価の減額要因を見つけ出すことは、相続開始以後にできる相続税対策の1つです。相続税申告の際には、ご所有の土地について何らかの減額要因を見いだせないか、不動産鑑定士や税理士などの専門家の意見を求めるようになさってください

【相続開始後】土地を分筆する

相続開始後にできる節税手法の1つに、土地の分筆が考えられます。相続税法における土地の評価単位は、利用単位ごととされています。

このため、相続開始時には一筆の土地であったとしても、遺産分割協議において土地を分筆し相続人Aと相続人Bがそれぞれを取得利用することになれば、2つの土地として評価することができます

たとえば、整形の土地や角地に所在する土地は、評価が高くなる傾向にあります。土地の分筆により、不整形な土地形状となる、あいは接する路線の数を減少する、となれば土地の評価額は下がり、相続税の納税額は減少します。

ただし、現実の土地の利用状況を無視するような分筆は、税務署に認められません。分筆後通常の用途に供することができなくなるような分筆や、あえて無道路地、不整形地、間口狭小な土地を創出するような分筆は、不合理分割として認められません。

広い土地を相続する場合は、「地積規模の大きな宅地の評価」の対象になる可能性も

平成29年までの「広大地の評価」が廃止され、平成30年以降は「地積規模の大きな宅地の評価」が適用されることとなりました。周辺宅地に比し地積規模の大きな宅地は、開発に際して道路を作ることが必要になり、潰れ地の発生が見込まれることから、土地の大幅な評価減が認められる制度です

【相続開始後】減税特例を利用する

相続税には各種特例措置があり、相続開始後に利用を検討できる制度もいくつかあります。代表的なものをご紹介します。

配偶者に対する相続税額軽減

まず、「配偶者の税額の軽減」制度があります。これは、被相続人の配偶者が遺産分割や遺贈により取得した財産の価額については、1億6千万円と法定相続分相当額のいずれか多い金額まで、相続税を課さないという特例です。

配偶者は被相続人と同一世代であるため次の相続までの期間が短いと見込まれること、相続財産は被相続人死亡後の配偶者の生活保障となること、などが考慮されこの制度が設けられています。

つまり、財産の総額が1億6千万円以下の相続であれば、財産のすべてを配偶者が承継する限り相続税は課されません。しかし、どの程度「配偶者の税額の軽減」制度を利用するかについては注意が必要です

一次相続時の遺産分割は、二次相続の納税額に大きな影響を与えるからです

小規模宅地等の特例

「小規模宅地等の特例」は、被相続人等の自宅や個人事業のために使われていた土地について、財産の評価額を減額する制度です。被相続人等の自宅として使われていた土地で、この特例の対象となる土地のことを「特定居住用宅地等」といい、その330m2までは財産の評価額を80%減額します。

被相続人等の自宅として使われていた土地を配偶者が相続により取得する場合、特別な要件は無く80%減額が認められます。配偶者以外の相続人が取得する場合には、同居であることや生計を一にする親族であることなど、いくつかの要件を満たすことが必要になります。

【相続開始後】事業承継税制、納税猶予を検討する

事業承継税制は比較的新しい制度で、現状は相続開始後でも検討でき個人版と法人版とがあります。いずれの制度も相続や贈与に際して、要件を維持し申請報告を継続することで納税が猶予され、事業後継者の死亡時に納税が免除されます。

しかし、不動産賃貸事業はこの特例の対象外となる場合が多く、大家さん向けの税制ではありません。詳細は顧問税理士とご相談なさってください。

相続人間のもめごとを避けることは相続税対策に繋がる

相続税対策の重要なポイントは、兄弟姉妹仲良く、相続人の間でもめないことです。「配偶者の税額の軽減」も「小規模宅地の特例」も相続人間で分割協議が整った財産にしか適用できません。

相続人が各自譲らず権利ばかりを主張し続けると、申告期限や修正期限を徒過して、各種特例の適用を受けられなくなります配偶者の税額の軽減も小規模宅地等の減額も、原則として申告期限後3年以内に分割協議が整うことが必要です。

遺産分割協議の場に立ち会いますと、思いもよらない過去の出来事が相続人の間に感情的なしこりを残していたことに気付かされます。兄弟姉妹が盆暮れ正月など、定期的に顔を会わせる機会を作り、平素から意思を通わせておくことは、円満な相続のために重要なことです

相続開始後できる相続税対策には限りがある

これまで、相続開始前後で行うことができる相続税対策について考えてきました。相続開始後にできる相続税対策は限定的で、ご所有になっている財産の種類などによって、適用の可否が左右されます。相続開始後なので、実質的に何の対策もできない、という例は少なくありません。

不動産を所有している方については、相続税のシミュレーションを早い段階で行っておくことは重要です。そして、もめごとを避け事業承継者をサポートするような遺言書を準備することが重要です。

もめない相続の対策は、生前でなければできません。なお、遺言書の書き方などは、信頼できる士業関係者などに相談することをおすすめします

相続税の支払いに不安を感じるなら売却を検討してみては?

財産が現預金のみである場合、相続税の納付に困ることはありません。所有財産以上の納税を求められることはないからです。しかし、相続財産の大半が土地などである場合、相続税の納付は困難になります。

相続財産の評価方法は財産評価基本通達に定められており、この通達に基づく評価額を相続税評価額といいます。通常、相続税評価額は時価(実際に売れる値段、いわゆる流通価額)よりも安い金額になります。

しかし、土地の場合、相続税評価額が流通価額よりも高くなる事例もあります。相続税評価額>流通価額となると、相続税の納付はとても大変になります。

このような事例は、路線価地域に所在する宅地よりも、市街化調整区域等に所在する土地や地目が雑種地の土地に見受けられます。市街化調整区域などに所在する土地等をご所有であれば、現時点の相続税評価額と流通価額の両方を把握しておくことは有益なことです。場合によっては、あらかじめ売却・換金しておくことが、節税になるだけでなく納税資金の確保にも繋がります。

相続税制には手元の資金不足を補うため物納や延納という制度もありますが、物納は相続開始後からの手続きでは間に合わず、いずれもなるべく適用を避けたい制度です。複数の土地をお持ちの方は、今のうちに相続シミュレーションを行い、現状をしっかり把握したうえで相続対策を検討なさってください

まとめ

この記事では、相続税の課税の実情と不動産の所有者が相続開始前後にできる相続税対策について解説いたしました。前述しましたが、相続が開始してしまうと取り組める相続税対策は限定されます。

あらかじめシミュレーションを行って正確な現状を把握し、その上でどのような相続税対策が有効なのか検討なさってください。そして、相続税対策も重要ですが、相続対策も重要です。もめごとを避け、ご家族が円満であることは、常に有効な相続対策となります。

相続開始後にできる相続税対策とは?
不動産の相続税対策をしっかりおさえておきましょう!

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この記事の監修者

秦 光一郎
秦 光一郎

税理士

会計事務所に勤務しつつ平成16年税理士試験に合格。税務コンサルタント会社にて金融機関をサポートする業務の中、資産税業務の経験を積む。平成22年税理士法人シン総合会計設立。主に中小企業の会計税務支援を中心に、事業承継、資産税業務にも従事。不動産会社の税務相談会相談員、金融機関のセミナー講師等に携わる。

●紹介されている情報は執筆当時のものであり、掲載後の法改正などにより内容が変更される場合があります。情報の正確性・最新性・完全性についてはご自身でご確認ください。
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