- 「既存不適格」とは建築当時は合法であったが、法令改正などで現在の法律に違反となってしまった状態のこと。
- 保安上危険な場合を除き居住や所有に制限はないが、建て替えや増改築の際は現行の法律に合わせなければなりません。
- 売却の際はデメリットをふまえて、対策を取っていく必要があります。
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目次
「既存不適格」とは?違法建築物との違い
「建物を建てた後に法律が改正された」というのがポイントです。
この法律又はこれに基づく命令若しくは条例の規定の施行又は適用の際現に存する建築物若しくはその敷地又は現に建築、修繕若しくは模様替の工事中の建築物若しくはその敷地がこれらの規定に適合せず、又はこれらの規定に適合しない部分を有する場合においては、当該建築物、建築物の敷地又は建築物若しくはその敷地の部分に対しては、当該規定は、適用しない。
この条文は、建築当時は適法だったものの、後の法改正により、基準に合わなくなってしまった建築物は、現行の法律の規定適用は除外しますという旨を示しています。
建築基準法の法令改正により発生
既存不適格建築物は、そのまま住み続けることは可能です。また所有していることに対して罰則の対象にもなりません。ただし、建て替えや建築確認が必要な規模の増改築を行う場合には、現行の法律に従う必要があります。
また、既存不適格建築物が「著しく保安上危険であるかまたは著しく衛生上有害と認める場合」には、特定行政庁が所有者等に建築物の除却を命令する権限があります。つまり、著しく老朽化して倒壊の危険がある既存不適格建築物などは、自治体の判断で撤去される可能性があるので注意が必要です。
それでは、既存不適格建築物の具体的な例を見ていきましょう。
ケース1:用途地域に適合していない
「用途地域」は、そのエリアに建てられる建築物の用途や大きさを規制するものです。例えば、「工業専用地域」に住宅を建築することはできません。合法的に住宅を建てたあとに、そのエリアが「工業専用地域」に変更された場合には、現在の法律に適合しない既存不適格建築物になります。
ケース2:建ぺい率をオーバーしている
建ぺい率(敷地に対する建築面積の割合)60%の場合、建築面積を120㎡とすることができます。その後の改正により、建ぺい率が50%に変更されてしまった場合、建築面積は100㎡までとなるため、図の赤い部分が改正後の建築基準法上では、面積オーバーとなっているため、既存不適格の建築物として扱われることになります。
ケース3:接道義務を満たしていない
建築基準法では、原則として幅員4m以上の道路に敷地が2m以上接していなければなりません。これを接道義務と呼びます。
建築基準法はこれまで幾度も改正されているため、建築当時には、「道路」に面していると認められて建築可能だった土地が、現在は接道義務を満たさなくなっていることがあります。このような接道義務を満たさない建物は、再建築不可の既存不適格建築物です。
既存不適格物件と違法建築物との違い
一方で、違法建築は、建築の時点からその当時の法律に適合しないままに建築されてしまった建築物のことをいいます。
違法建築物を所有しているとどうなる?
そのため、違法建築物の場合、市町村長や都道府県知事は、違法建築の建築主、工事の請負人または現場監督者、所有者等に工事の施工停止、建築物の除却、移転、改築、増築、修繕、模様替え、使用禁止、使用制限などの措置を命じることができます。
また、違法建築の設計者や工事監理者、工事の請負人などは、免許または許可の取消、業務停止処分などの措置を受けることとなります。
既存不適格建築物の売却が難しい3つの理由
【理由1】買い主がローンを利用しにくいから
【理由2】築年数が古く老朽化しているから
そのため、建物の老朽化により資産価値が下がっており、買い手が見つかりにくい可能性があります。とくに旧耐震基準の建物の場合は、市場性が落ちます。
【理由3】建て替えや増改築に制限が生じるから
既存不適格建築物を売却する際の注意点
買主に告げる必要がある
価格が低くなる恐れがある
住宅ローンの審査に通らない可能性がある
実は、既存不適格建築物には、デメリットばかりではありません。たとえば、現行法で定められた容積率を超える建物は、価値が高くなる可能性があります。また、現在は建物を建てられない場所に合法的に建築されている場合も、一定の価値があります。
既存不適格建築物の売却におすすめの6つの方法
1.通常の不動産会社仲介による売却
一般的な相場より低い金額での売却になる可能性もありますが、割安物件であると認識してもらうことにより、通常の不動産会社の仲介によって売却することもできないわけではありません。
もちろん、売却に際しては、重要事項説明書などで既存不適格建築物であることは説明する必要はあります。通常の不動産会社の仲介によって売却することも選択肢のひとつとして考えておくと良いでしょう。
2.買取業者による買取
また、気を付けておきたいこととして、業者の中には買いたたきを行う業者もいる可能性があるということです。必ず、複数の会社に査定を行って、査定結果を精査し業者買取の相場観を確認しておく必要もあります。
3.既存不適格内容の是正後、仲介による売却
まずは隣地の所有者に売却予定がないかを尋ねてみたり、減築にどれくらい費用がかかるかを工務店などに確認したりしてみるとよいでしょう。
4.現金買いできる買主に売却
5.古家付き土地として売却
一般的には、古家の取り壊し費用は買主負担であることが多いため、古家付き土地として売却する際には取壊し費用を考慮した価格設定を検討する必要があるでしょう。
6.更地にして売却
ただし、更地にした場合、売却できるまで固定資産税の特例が適用されないため、税額は更地にする前のおよそ6倍となることについては注意が必要です。
再建築不可の既存不適格建築物は、建物を残しておいたほうが有利な可能性もあります。建物を取り壊すかどうかは、不動産会社と相談して慎重に判断してください。
まとめ
また、既存不適格建築物の売買実績があり、正しく価値を査定してくれる不動産会社に仲介を依頼することが大切なポイントです。どの不動産会社に依頼をすればよいか分からないという方は、複数の不動産会社などに一括して査定依頼をすることができるサイトを活用するのも一案です。査定結果、そしてその根拠を比較して、既存不適格建築物の売却に強い業者、売却方法の具体的な提案をしてくれる業者を選び、売却活動を進めていくとよいでしょう。
既存不適格住宅の売却はプロのアドバイスをもらうのが、
少しでも高値で売却するための一番の近道です!
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この記事の監修者
不動産鑑定士/土地活用プランナー
千葉大学卒業、地方銀行に勤務後、都内の不動産鑑定業者で事務所ビルやマンション等の収益物件の評価を数多く経験。現在は不動産鑑定士事務所を経営し、住宅・店舗・更地・山林・資材置場など多様な不動産に携わる。
土地活用や相続対策にも精通し、不動産に関するお悩み解決に尽力している。
1981年(昭和56年)6月1日以降に建築確認申請を通った建物は「新耐震基準」と呼ばれ、これより古い建物は「旧耐震基準」と呼ばれます。旧耐震基準の建物は安全性の懸念があったり、住宅ローン控除を基本的に利用できないのがデメリットです。