土地の造成とは|工事の種類や費用、具体的な流れをわかりやすく解説します

2024.07.19更新

この記事の監修者

吉崎 誠二
吉崎 誠二

不動産エコノミスト/社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長

土地の造成とは|工事の種類や費用、具体的な流れをわかりやすく解説します

土地の造成とは活用目的に合わせて土地を整えることです。この記事では土地造成の種類や費用・流れを詳しく解説します。

この記事のポイント
  • 土地をもっとも有効的に活用できるように、区画や形を整えるための工事が造成工事です。
  • 土地の状態に応じて伐採や切土・盛土などの工事内容があり、活用方法に応じてさまざまな仕上げ方があり、費用も異なります。
  • まずは土地活用方法を決めることから始めましょう。

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目次

土地の造成とは

土地造成とは、土地の使用目的や用途に合わせて区画や形を整えることです。たとえば、住宅を建てる場合を考えてみましょう。

建設前の土地に樹木が多く茂っており、傾斜もある場合、そのままでは住宅を建てられません。そのため、樹木を伐根し、傾斜をなくすために土を盛ったり削ったりして、建築に際して「土地を最も有効的に活用できるようにすること」が必要です。

さらに、土を盛ってできた高低差から土地が崩れないように擁壁を設置し、盛った土が建物の重さに耐えられるように地盤を強化する必要もあります。これらの建物を建てる前の土地の工事が造成工事です。

一般的には、次のような土地で造成工事が必要になります。

● 地盤が弱い
● 高低差がある
● 変形している

元々が田んぼや畑などだった地盤が弱い土地や山林などの傾斜地・三角形やひし形といった変形地は、そのままでは活用が難しいため造成工事が必要になります。

該当エリアのことを、「宅地造成工事規制区域」といいます。

吉崎 誠二
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宅地造成工事規制区域内の土地では、次のいずれかに該当する宅地造成に関する工事を行う場合には、知事等(政令指定都市などでは市長)の許可が必要です。

(1) 切土で、高さが2mを超えるがけ(30度以上の斜面)を生ずる工事
(2) 盛土で、高さが1mを超えるがけを生ずる工事
(3) 切土と盛土を同時に行う時、盛土は1m以下でも切土と合わせて高さが2mを超えるがけを生ずる工事
(4) 切土、盛土で生じるがけの高さに関係なく、宅地造成面積が500㎡を超える工事)

検討している土地が規制対象かは、サイトなどで自身で調べるか不動産会社やハウスメーカーに確認すると良いでしょう。

造成工事の種類

造成工事は土地の状態に応じて適切な工事を施す必要があります。造成工事の主な種類をみていきましょう。

整地

整地とは、土地を平坦にする工事です。土地に建物がある場合は取り壊し、コンクリートがらや石、樹木などの不要物を取り除いて地面を平らできれいな状態にします。

不要物を取り除くだけでなく、ローラーなどの重機を用いて上から圧力をかけて土地を固める作業が行われ、時間の経過や建物が建った重みでの沈下を最小限に留めるようにします。

伐採・防草

活用目的に支障がある樹木を切り倒すのが伐採です。一般的には、切り倒すだけでなく地中の根も除去する伐根まで行われます。伐採・伐根は土地に生えている全ての樹木が対象ではありません。

活用内容が決まっている場合は、支障がない部分の樹木を残して緑を活用するといった選択肢もあります。

また、防草とは防草シートなどをかぶせ草が生えるのを防ぐことです。整地後に長期間放置する場合でも、草が生い茂ってしまうと次の活用に時間がかかったり、もしくは近所からクレームが入ったりすることなどがあるため、防草措置を取っておくことをおすすめします。

地盤改良

地盤改良とは、軟弱な地盤の強度を高めて活用目的に耐えられる地盤に改良する工事です。

元々が田畑や沼地だった場合、そのままでは建物の重みに耐えられずる沈下する恐れがあります。なお、地盤改良が必要かどうかは、建設前の地盤調査でチェックします。

地盤改良が必要になれば、表面をセメント系で固める表層改良や建物を支えるための柱状改良・鋼管杭など活用目的に合わせた地盤改良が行われます。

盛土・切土

土地の高低差をなくしたり、道路と同じ高さにしたりするための工事が盛土と切土です。
盛土低い場所に土を持って地面を高くする
切土高い場所の土地を削って地面を低くする
元々あった地盤を削る切土に対して、新しく土も盛る盛土は地盤が緩みやすいため地盤改良も必要になる可能性があります。

土留

盛土で高さができた部分や元々高低差のある部分は、そのままでは斜面から崩れる恐れがあります。それを食い止めるための擁壁を作る工事が土留です。

擁壁はブロックや板・コンクリートなどとさまざまな種類があり、土地の活用目的や高低差などに応じて必要な構造が異なってきます。

造成工事の方法(仕上げ方法)の違い

造成工事の土地は仕上げを施して工事が完了します。仕上げ方法にも種類があり、活用目的に応じた仕上げを選ぶ必要があります。

粗仕上げ

コンクリートがら(コンクリートのがれき)や石、樹木などの不要物を取り除いて重機で転圧して均す仕上げ方です。仕上げ方としては、もっともシンプルでほかの仕上げに比べて費用も抑えられます。

ただし、粗仕上げでどこまでしてくれるかは、依頼する会社によって異なるので事前に確認することが大切です。

砂利・盛土仕上げ

整地後に土や砂利・石などを敷き詰めて土地を均す仕上げとなっています。土を敷き詰める際は、真砂土と呼ばれる公園や学校などの舗装で使用される土が使われるのが一般的です。

砂利仕上げは土地の見た目が良くなるだけでなく、水はけが良くなるというメリットもあります。

砂利・盛土仕上げは、駐車場や庭などで活用する際によく利用されます。売却を検討する場合も、盛土仕上げを施しておくことで見た目が良くなり、買い手の印象アップにつながります。

防草仕上げ

防草シートをかぶせることで、土地に草が生い茂るのを防ぎます。

すぐに活用の予定がない土地でも防草仕上げをしておくことで、活用する際に雑草取りが不要になり、すぐに土地を活用しやすくなります。

コンクリート・アスファルト仕上げ

整地後の土地にコンクリートやアスファルト塗装するのが、コンクリート・アスファルト仕上げです。整地後に駐車場にする際に選ばれるのが一般的です。

原材料費の違いから、コンクリートはアスファルトに比べてコストが高くなりますが、補修がほとんどなく耐久性が高いという特徴があります。

アスファルトはコンクリートに比べて、初期コストを抑えられますが、補修回数が多いためランニングコストのアップには注意しましょう。

造成工事の費用目安

造成工事の費用は、工事内容や土地の状態・地域などによって大きく異なります。大まかな目安として、国税庁による東京都の宅地造成費用をみてみましょう。(費用は一例です)
工事内容費用目安
整地費800円/m2
伐採・伐採費1,000円/m2
地盤改良費1,800円/m2
土盛費7,400円/m2
土止費(土留費)77,900円/m2
また、傾斜角度ごとの造成費の目安は以下のとおりです。
傾斜度費用目安
3度超5度以下20,300円/m2
5度越10度以下24,700円/m2
10度超15度以下37,600円/m2
15度超20度以下52,700円/m2
20度超25度以下58,400円/m2
25度超30度以下64,300円/m2
ただし、上記金額はあくまで目安ですので注意してください。

造成工事は既存上により大きく内容や金額が異なります。また、昨今建築工事費の上昇が続いており、最新の状況は、必ず見積もりを取って確認してください。

吉崎 誠二
吉崎 誠二
実際の造成工事費は、エリアや工事内容などによって大きく異なるので事前に見積もりを取って検討するようにしましょう。

造成工事の流れと期間

造成工事の大まかな流れは以下のとおりです。
複数社に見積もりを依頼し、費用を比較して依頼する会社を選定します。選定後は、必要に応じて許可を申請し造成工事が行われます。

造成工事自体は、1~2週間ほどが目安です。ただし、天候や工事内容によっては1~2カ月ほどかかるケースもあるので、事前に工期については見積書を確認するようにしましょう。

また、依頼する会社を選定する段階でも現地調査などが必要になるので、比較だけでも1~2週間は必要です。造成工事を検討してから完了まで、1~2カ月ほどかかることを考慮して余裕を持ってスケジュールを立てるようにしましょう。

造成工事の注意点

ここでは、造成工事の注意点を解説します。

都市計画法・宅造成等規制法に基づいて計画を立てる

造成工事は自由に実施できるわけではありません。都市計画法・宅造成等規制法に則って造成工事する必要があります。
都市計画法計画的な都市づくりのための法律
宅造成等規制法住環境の安全を守るための法律
さらに、エリアによっては自治体が指定する規制がかかるケースもあります。土地造成を検討している場合は、事前にどのような規制があるのかは理解しておくことが大切です。基本的には造成工事の見積もりを依頼した段階で、不動産会社などが規制についても調査してくれます。

アパートローンや住宅ローンは使えない

土地造成費用は、数百万円かかるケースも珍しくありません。しかし、土地造成にかかる費用はアパートローンや住宅ローンには組み込めない点には注意が必要です。自己資金で捻出できない場合は、つなぎ融資やフリーローンを検討することになります。

つなぎ融資やフリーローンは住宅ローンよりも金利が高くなる点には注意が必要です。金融機関によっては住宅ローンの分割融資を受けられるケースもあるので相談してみるとよいでしょう。

造成のタイミングによっては固定資産税に注意する

建物が建っている土地は固定資産税の軽減措置を適用できますが、建物を解体すると軽減措置が適用できません。軽減措置が適用できないと、本来の固定資産税の税額となるので解体前の最大6倍に固定資産税が増える可能性があります。

固定資産税は毎年1月1日時点の状態で判断されるので、その年の間で解体してすぐに居住用の建物を建てるか売却すれば固定資産税が高くなるのを防げます。反対に、長期間更地で放置する場合は、固定資産税に注意が必要です。

工事内容によっては経費計上できる

土地造成費用は、基本的に土地の取得費です。しかし、造成の目的によっては一部を経費計上できるケースもあります。

たとえば、土地に問題がなくてもアパートを建設するには隣地との関係性で造成工事が必要になるケースでは、以下のような項目が必要経費にできる可能性あるのです。

● 土留工事
● 境界線確定
● 土壌汚染調査

上記の場合、一般的な整地などの造成工事は土地の取得費になります。どこまでが取得費で何が経費計上できるかは判断が難しいので、税理士や不動産会社に相談して慎重に判断するようにしましょう。

複数社に見積もりを取って比較する

造成工事の費用は依頼する会社によっても大きく異なります。会社選定の段階では、複数社に見積もりを取って比較検討することが大切です。見積もりを依頼する際には、金額だけでなく工法や材料などもチェックしましょう。

また、活用方法によっても造成工事の内容が異なってきます。事前に活用方法が明確になっているほうが、造成工事のコストを抑えやすくなります。

活用方法が決まっていないなら、造成工事の前に土地活用プラン決めることから始めると良いでしょう。

まとめ

土地造成工事の種類や費用について解説してきました。地盤が弱い・変形している・高低差があるなどの土地はそのままでは活用できないため土地造成が必要です。

土地造成にはさまざまな工事内容や仕上げ方法があり、それぞれ費用が異なります。造成工事を検討する場合は、複数社に見積もりを取り、慎重に比較検討することが大切です。

活用方法が決まっていればそれに合わせた造成工事を選べるので、まずは土地活用方法を決めることから始めると良いでしょう。

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吉崎 誠二
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不動産エコノミスト/社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長

(株)船井総合研究所上席コンサルタント、等を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルなどを行うかたわら、ラジオNIKKEI「吉崎誠二の5時から”誠”論」などテレビ、ラジオのレギュラー番組に出演。また新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は年間多数。

著書:「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社)など11冊。

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