「混沌の種」。HYDEは本作『HYDE [INSIDE]』について、Apple Musicにそう表現する。前作『anti』から約5年ぶりに発表した5作目のアルバムには13曲を収録、全曲のプロデュースをHYDE自身が手掛けた。 美しいピアノの音色が響くインストゥルメンタル「INSIDE HEAD」で静かに幕が上がると、続く「LET IT OUT」で一気に熱く激しいエモーションが渦巻く。この曲は2020年のコロナ禍にHYDEのニューモードを示すシングルとして発表された。世界中が混乱に陥った時期、HYDEもまた「やる気をなくした期間」があったというが、その時間は決して長くはなかった。むしろ「LET IT OUT」ではそれまで以上に激しいメタルサウンドを鳴らし、“Wake it up”と呼び掛ける。先が見えず不安に覆われた世界で、人々を揺り動かすものがどこにあるのか、彼は知っていた。 『HYDE [INSIDE]』、つまり“HYDEの内部”を意味するタイトルには、「誰しもが悪魔を内に秘めている」という意味を込めたと彼は語る。ここで言う悪魔とは、ただ邪悪な存在というよりも、人間が持つプリミティブな衝動を表しているように感じられる。制作陣にはソロ名義でのバンドのメンバーや海外プロデューサーら総勢14人が参加。SiM、MY FIRST STORYといった気鋭バンドのメンバーたちもHYDEの重厚な世界観に新たな風をもたらした。本作の聴きどころは「HYDE史上最も激しいところ」であり、「だまされたと思って聴いてみて」と彼は続ける。 HYDEの中で燃えさかる衝動は勢いを弱めることなく、終盤に向けてますます激しさを増し、YD(Crystal Lake)とAliを共同クリエイターに迎えた「SOCIAL VIRUS」でピークに達する。この曲におけるHYDEのボーカルは、野生の本能をむき出しにした生き物のような荒々しさと孤高の美しさがある。そしてラストは荘厳なバラード「LAST SONG」にたどり着く。HYDEが「時間がかかったので思い出が多い」と語るこの曲は、宮田“レフティ”リョウ、hico、Aliが制作に加わり、ゴシック的な美と影を描いた。 そしてHYDEが再び自身の内面へと深く潜り込み、静寂が訪れるとリスナーは知ることになるだろう、自身の中にも“混沌の種”がまかれていることを。
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