昨年12月に高知県高知市で行われた日本研究皮膚科学会第42回年次学術大会を取材!
皮膚科学研究に取り組むスペシャリストが集う場で、
多くの関心を集めたナディーン ペルノデ博士の「メラトニン研究」に注目してみましょう。
昨年12月に高知県高知市で行われた日本研究皮膚科学会第42回年次学術大会を取材!皮膚科学研究に取り組むスペシャリストが集う場で、多くの関心を集めたナディーン ペルノデ博士の「メラトニン研究」に注目してみましょう。
香りやテクスチャーが心地いいだけではなく、すぐれた化粧品には、先端の皮膚科学研究が活かされています。医療研究の進化と同じように、美容の世界も日々進化。私たちの肌は、細胞やDNAというミクロのレベルで解析され、美しさやエイジングに関わるポイントを狙ってケアする時代に突入しました。日ごろ何気なく使っているスキンケア化粧品のボトルの中には、皮膚科学研究のスペシャリストたちによって発見された新たな知見が応用されているのです。
今回の研究発表者、ナディーン ペルノデ博士は、私たちの肌細胞に備わっているさまざまな働きを長年にわたって研究されてきたエキスパート中のエキスパート。加齢や環境、ストレスの影響により、きちんと行われなくなってしまう肌本来の働き、たとえば夜間の修復機能などについての研究に取り組まれています。
そして今回もっとも印象的だった発表は、メラトニンと肌の関係における研究結果です。メラトニンは、睡眠に関わる生体分子として知られていますが、肌のダメージ修復においても重要なものであるということがわかりました。というのも、メラトニンの活動は、体内に備わっているサーカディアンリズムにより、夜間に最大のレベルに到達。肌細胞が修復に入るタイミングを知らせるシグナルとなっているからです。
けれど、メラトニンの生成量は、年齢とともに減少していく傾向にあるため、この修復機能がきちんと行われなくなり、その影響がさまざまな悩みとなって肌表面に表れてしまうのです。
ナディーン ペルノデ博士により、新たに発見された事実。それは、メラトニンの量だけではなく、皮膚細胞に存在するメラトニンレセプターも年齢とともに減少していくという研究結果です。
レセプターとは、外界や体内からの刺激や物質を受け取り、反応を起こすスイッチのようなもの。メラトニンレセプターを持っていない細胞では、紫外線などによるダメージをきちんと修復することができず、その影響が蓄積されることでエイジングが加速。健やかで美しい肌を保つには、メラトニンレセプターの存在が、とても重要であるといえるのです。
美肌は夜つくられる、という定説は、本当だった、ということがわかった今回の取材。そして、互いに呼応しているメラトニンとサーカディアンリズム、自己修復機能など、すべてに働きかけるようなケアが私たちには欠かせないことを改めて実感しました。
私たちの体には、朝に目覚め、夜になると眠りにつくという自然のリズムが備わっています。約24時間でくり返されるこのリズムのことをサーカディアンリズムといいます。
サーカディアンリズムは、肌や体をつくる約60兆個の細胞にあり、昆虫や植物、カビにも備わっています。生物の長い歴史の過程で保たれ、引き継がれているこのリズムは、生命維持においてとても重要なものといえます。
けれど近年、加齢、そして不規則な生活や、パソコンやスマホが発するブルーライトにより、このリズムが乱れ、肌や体の他の機能にも影響を及ぼすことが判明。夜間の自己修復がされにくい状況になっているのです。
1946年に最初の研究所がニューヨークに設立され、それ以降、ミネソタ、トロント、パリ、そして東京はアジア初の研究所として1990年に設立されました。その後ソウル、上海にも拡がりました。現在、1500人以上の皮膚科学者やエンジニアが、皮膚の研究をはじめ、臨床試験や処方開発、製品開発を行っており、その研究力では定評があります。
創設者のミセス ローダーも、夜に肌ダメージを修復することの大切さに着目していました。近年は、エピジェネティクス(後成遺伝学)という、環境による影響を考慮した研究もしています。ライフスタイルや環境により、肌年齢はコントロールできると考えているのです。
20年以上、日本人女性の肌を研究してわかってきたのは、日本人女性の肌は、バリア機能の形成に欠かせないフィラグリンの産生量が少なく、刺激に対して過敏なこと。大気汚染物質が、肌の色素沈着を増加させていることが判明しました。
外的刺激に対して繊細な日本人女性の肌の働きやリズムを根本から整え、DNAやタンパク質のダメージを少なくすることを目指し研究しています。
持って生まれたものや年齢にも左右されず、先端の皮膚科学により、
肌の美しさは、きっと永らえることができる!
今回の取材により、肌の明るい未来が見えてきました。